葬儀の料金プランと見積もりは注意が必要です
誰もが身内の葬儀を日常的に依頼しているわけではありません。また、葬儀社に依頼する機会は誰かが亡くなった“その時すぐ”です。充分な準備をしておらず(準備もしづらい)、その時を迎えてしまうのがお葬式というもの。しかし、だからこそ葬儀社への依頼は料金が“言い値”になってしまうリスクが潜んでいます。
- 葬儀社と依頼者の情報量の差が圧倒的に大きい。
- 看病や看取りで事前に準備する余裕が充分にない。
- 葬儀の準備をすること自体がはばかられる。
- 亡くなった時点で病院はすぐに出なくてはならない。
- ご遺体お迎えからサービスが始まっていて葬儀社を選べていない。
インターネットで事前に調べたり、病室からスマホで検索し連絡する方もいるようですが、それでも知らないとリスクがある料金(プランや見積もり)について注意点を確認してください。
目次
1.誤解を与えている葬儀社の“プラン”や“見積もり”
葬儀のトラブルで一番多いのは料金です。例えば、悪質な事例では「プランでは40万円と説明されていたのに、いざ頼んで請求額が200万円近くにもなった」ということも・・・。
では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
1-1 何故、多くの葬儀社が“プラン”を謳っているのか。
プランを謳う葬儀社には二つの種類があります。一つは、本当に必要な内容を含めてセットとしてプランを提供する葬儀社です。もう一つは、必要なものを全ては含んでいないセットをプランと称している会社です。居酒屋で例えれば「お通し」や「席料」のようなものですから、お通しだけで飲み代が終わるはずはありません。しかし、多くの葬儀社のHPを見ると実は後者の「お通し型プラン」、つまり、最低基本料金をプランとして謳っている場合が非常に多いのです。
このような「プランもどき」を広告している葬儀社が多い理由は、近年の葬儀代金(客単価)が下落していることにあります。単価が下がっている要因は、インターネットの広がりなどで葬儀社を比較できるようになり、価格競争が激しくなっていることが挙げられます。また、社会の変化から家族葬など小規模な葬儀が主流になってきていることもあります。
そのため、悪質な葬儀業者は顧客獲得のためにプランを安く見せて、客単価を挙げるために受注してから必要なものを後出ししていくことで売上を上げていこうとするわけです。会社によっては葬祭ディレクターに客単価をあげるためのインセンティヴを支給していることもあるようです。
また、インターネット上で全国展開している“葬儀ブローカーモデル”が多く参入してきたのも一つの要因です。例えば、「○○のお葬式」というブランドで展開するような会社ですが、これらの会社の一部は自社でサービスを提供していません。ブローカー型の会社はインターネットなどで低価格を謳って集客だけ行い、各地域の地場の葬儀社を下請けにしています。下請けの葬儀社はブローカーに紹介料をかなり払わなくてはならないので収益を圧迫しますから、やはり客単価をあげないと儲けが少ないわけです。
1-2 お通し型プランで総額が跳ね上がるカラクリ
葬儀プランが安く見える場合であっても、一部の葬儀社が総額を上げていく方法は色々とあります。
例えば、
- 料理などの変動費の単価を高く設定する。
- プランの祭壇は実際は見劣りするものにしておき、グレードアップせざるを得ないようにする。
- 自社の葬儀場で行う場合は、式場の使用料を別途に求める。
- 病院から搬送する車代(寝台車)は含んでいるものの、火葬場への車代は含んでいない。
- プランの遺影写真を白黒にしておき、カラーにグレードアップせざるを得ないようにする。
といったことが挙げられます。一部の業者は「良いお花に代えておきますね」とか「お棺を良いものにしておきました」などと親切を装って了解なく金額を吊り上げていくケースもあり、これがトラブルのもとになります。
良質なプランかどうかの見極めは、「何が入っているか」を謳っているものより「何が他に必要か」を明示しているかどうかが、一つの重要なポイントです。
1-3 市民葬・区民葬は本当に安いのか?
自治体によっては葬儀の支援を行っているケースがあり、市民葬や区民葬といったものがあります(生活保護葬は後述)。
これらの制度の趣旨は「比較的安い料金で葬儀ができる制度」というものです。しかし、本当に安くなるとは限りません。例えば、東京都内(23区)の区民葬は祭壇・霊柩車・火葬・骨壺に関して指定葬儀社が制度に定められた金額で提供するというものです。
しかし、自治体のホームページを見れば記載してありますが、「区民葬儀の費用だけでは葬儀は行えません」と明記してあります。つまり、遺影写真・生花・食費・御供物・斎場使用料等の費用は別途かかるわけです。
また、制度に定められた各種料金も決して「格安」というほどではありません。そのため、市民葬や区民葬であっても、むしろ高くなってしまうケースもありえるのです。
1-4 自社斎場で行う葬儀社に対して注意すべき点
葬儀社が運営している自社の斎場で葬儀を行う場合は、特に注意が必要です。自社斎場で行う葬儀社は当然のことながら他社に自社の斎場を使わせません(一部は提携して利用させるケースもある)。そのため、相見積りができません。
次に、必要なもの(例えば、料理や祭壇等)は全てその葬儀社で調達しなくてはなりませんから、葬儀社にとっては独占的となり料金も都合よく設定しやすいのです。例えば、「お酒の持ち込みはしてもいいですか?」と聞いてみてください。恐らく、「食中毒などのリスクもあるので、飲食の持ち込みは全てNGです」と断られる可能性が高いです。お酒を持ち込んだところで食中毒は考えにくいですが・・・。
亡くなった後で事前の見積もりがないままに自社斎場で行う葬儀社に依頼するのは絶対避けるべきでしょう。特に、斎場で見積りを見てから決めればよい、と考えてとりあえず搬送(病院へのお迎え)を依頼するのはやめましょう。搬送の後に安置されてからでは葬儀社やプランを選びぶことが困難になります。そのため、以下のようなトラブルになるケースが非常に多くあります。
- 安置してもらってから見積もりを確認したが高すぎる。
- 他の葬儀社に変えたいと伝えたら違約金を支払うように言われた。
といったものです。
もちろん、全ての自社斎場で行う葬儀社が悪徳なのではありません。事前の準備と確認をしっかりしておくことが重要なのです。
2. 総額見積もりを事前に!
上記のことから葬儀の料金は落とし穴が多いことが分かります。もちろん、全ての葬儀屋に問題があるわけではありません。しかし、葬儀代金は安くても数十万円、高ければ数百万円もかかります(全国平均でも100万円を超えます)。
充分に事前に調べて確認しておく必要があります。
2-1 葬儀費用の総額
葬儀にかかる費用は葬儀プランの内容だけではありません。また、参列者(会葬者)の数によっても変わることがあります。
まず、葬儀社がプランとして提供している
- 病院からのお迎え、火葬場への移動などの車
- 祭壇や線香などの備品や設備
- 装束などのご遺体の服や布団
- 枕花や棺、骨壺など
- お葬式の進行や手続きなどの手配
といったものに加えて、変動的にかかる
- 祭壇や棺のグレードアップ
- 人数分の料理や飲み物
- 会葬者への礼状やお返し
があります。
これに、
- 斎場(葬儀場)の利用料
- 精進落としの料理と飲み物、場所代(部屋代)
- 火葬料金
などが必要になります。
また、宗教儀式(仏式等)の場合はお布施と戒名に相当な出費が必要です。
事前の見積もりには、これらの費用の総額をきちんと確認しましょう。
2-2 葬儀費用だけでない。他にもコストがかかる。
お金がかかるのは葬儀だけではありません。例えば、お墓や仏壇が必要となる場合は、かなりのコストがかかります。
また、葬儀に参列しなても香典だけ頂いた方などもいるでしょうから、それらの方への「後返し」などもあります。費用は安いですが、喪中はがきの手配も必要です。
1周忌なども儀式としてまとまった費用がかかります。
いずれにしても、葬儀の前後は非常に忙しく、そして心理的にも辛い状態ですから、後々のことも考えて予算や金額の全体感を掴んでおかないと思わぬ高額な出費になりがちです。
3. 見積りの重要チェックポイント
3-1 まず、誠実さを見極める。
良心的できちんとした葬儀社は、こちらが素人であることが分かっていますから、流れを追って詳細に丁寧に説明をしてくれます。逆に、見積書だけ渡されて説明されなかったり、葬儀の流れを説明せず「入っているもの」を中心に説明する葬儀社は注意が必要です。
まずは、相手が誠実に対応してくれているかどうかの見極めが重要です。
3-2 見積り確認事項
プランや見積もりに入っているものはもちろん、入っていないものが何かを確認してください。また、オプションはどんなものがあるのか、それらの金額はいくらかを確認しておくことは、後から高額にならないための重要ポイントです。
葬儀社への支払いに加えて、どの斎場(葬儀場)を使うのか、火葬場はどこにするのか、それらの料金はいくらかといったものも確認しましょう。
4. 葬儀費用の負担を軽減させるもの
葬儀の費用は高額です。そのため、幾つかのポイントも知っておきましょう。
4-1 給付されるもの
葬祭費
健康保険組合に入っている場合は各健保から弔慰金等が支給されることがありますが、国民健康保険に加入している場合でも支給がありえます。
ほとんどの自治体では、5万円前後の葬祭費支給制度がありますので、請求をしましょう。なお、請求手続きには、葬儀社からの領収証や会葬礼状などが必要であり、請求も2年以内に行う必要がありますので注意が必要です。
生活保護葬
各自治体では生活保護受給者を対象とした葬祭扶助制度により葬儀を行うための費用を支給します。条件などがありますから、詳細は各自治体に確認してください。
4-2 負担が減るもの
その他にも、「香典」が収入として生じます。会葬者をどれだけ招くのか、どれくらい来る可能性があるのかは香典の金額に影響します(来ない方からも頂く可能性があります)。
葬儀の予算は香典(=会葬人数等)にも影響するでしょうから、考慮しておくと参考になります。
お葬式を行う時間は故人を見送る大切な時間ですからギスギスしたくないものです。何よりも事前に確認し、安心して依頼できる葬儀社に任せられるようにしておくことが大事です。